ソコロフに関するドキュメンタリー映像を観た話

ここで告白いたしますが、私はmedici.tvの有料会員です。1年以上前から有料会員だったのですが、つい、忙しさにかまけて全然映像を見ていませんでした。なんというもったいないことをしていたのでしょう。

思うところあって最近せっせとmedici.tvの映像を見るようにしています。私だけの現象なのかもしれませんが、スマホでコードレスのイヤホンで見ていますと画面と音声にわりとずれが生じるので、気持ち悪いのですが、なんとかみています。

おとといはソコロフのドキュメンタリー映像を見ました。前からみなくちゃと思っていたやつなのですが、軽く驚いたのは、ソコロフ本人のインタビューが一切なかったこと。関係者がソコロフについて語る、というのと、昔の映像と音声、そしてソコロフの最近お亡くなりになった奥さんのポエム、そういったものを組み合わせて作られていました。”A Conversation That Never Was”(これまでになかった会話)っていうタイトルだから勝手に本人がしゃべると思っていたんですよね。ちぇー。ちなみにこれです。

https://www.medici.tv/en/documentaries/grigory-sokolov-conversation-never-was/

ソコロフ、インタビューが大嫌いっていう噂なんだもん、そうだよな、出ないよね、と思いました。しかし最後のエンディングのスクロールのところでフランコ・パノッツォ(ソコロフのマネージャー)の名前が出ていたので、本人も了承の上で世に出た作品なのだということはわかります。

この作品で個人的に特に面白いなと思ったのは、アムステルダムのコンセルトヘボウでピアノのコンサートシリーズを開催しているおじさんのコメント。「これまでいろいろなピアニストと接してきたのですが、だいたいみんな、ほぼ例外なく、他のピアニストに関して悪口を言う。」

まずここで、おおお、と思ったわけです。そうだよな、みんな自分が一番だとか、あのピアニストが売れまくっているのは不当だ、おかしい、とか思っていますよね。嫉妬も含めて。そらそうだよな、人間だもの。わかるわかる。

「でも」と続くわけです「ソコロフのことを悪く言う人はいない」。ここで再びおおおお、と思うわけです。さすがソコロフ。

4年ぐらい前、ねもねも舎が出会ったある巨匠クラスのピアニストは、ソコロフのことを、ある音楽祭で出会ったときの話をしながら、不思議な人だ、コンサートが終わった後にみんなでディナーに行こうというようなときにも彼は必ず現れない。すべての音楽家たちが集まっているような時にもだ。不思議な人だ。と言っていました。ああでもこれは演奏とは関係ありませんね。

それから、ヴェルビエ音楽祭の関係者のコメント。「ソコロフはすべての最高クラスのピアニストをさらに超えた、例外的に素晴らしい存在である(エクステンションという言葉を使っていました)。」と語っていて、ここでもまたおおおおお、と思ったのです。素晴らしい表現。

ソコロフはどうしても日本に来てくれない。残念でしょうがないです。では今日もmediciしてきます。