「世界一の難曲」聴き比べ

イスラメイ、世界一難しいピアノ作品を目指してバラキレフが作った名作ですよね。1869年作。後にラヴェルが夜のガスパールを書くのはこの曲に挑戦状を叩きつけるためだったとか。イスラメイはただ難しいだけでなく、メロウなところはメロウで、パンチが効いているところはパンチが効いているのがいいよね。・・・なぜロックのくだらない解説のような説明をしているのだろうか私は。とにもかくにも名曲なんですよ。

難しすぎるので弾ける人も多くない。演奏中に崩壊する危険性もあるので、演奏会で採り上げる人も少ない。やはりロシア系の人が多く挑んでいますかね・・・?

まずは昨日も採り上げましたガヴリーロフ。スタジオ録音とは言えあまりにもクリア。最後のオクターブの速さは異常。どうやったらその速度でこなせる?楽譜付きの動画なんで確認がてらもういちどお聴き下さい。

この演奏をひとまず基準としましょう。耳に入れておいてね。今日はYouTubeで聴けるほかの人のイスラメイを聴き比べてみたい。

ポゴレリチ:1990年。もっとも輝いていた頃のポゴレリチ。音がでかい。これは興奮すること間違いない。こんなん目の前で弾かれたら卒倒しますよ。傷はあるが破壊力が半端ではない。スローな部分にはあまりロマンはなく辛口。そこもまたいい。

ベレゾフスキー:安心して聴ける感じ。ザッツ・うまい。再生回数すげえ。

プレトニョフ:若干怪しい部分もあるが最後は勢いで寄り切り。カーネギーホール沸騰

ユジャ・ワン:小銃が火を吹く!!隠し撮り。ユジャ・ワンのベストではないかも。

リシッツァ:この人YouTubeで一時ブレイクしましたけど、実はあまり上手ではありません。特に実演を聴くとあれっ?て思いますよ。よく聴いてください。この演奏もごまかしが多い。ちゃんと音が鳴っていません。政治的な発言も嫌われてか最近はもうほとんど名前を聞かない。

ホロヴィッツ:そこまで大爆発していないのでやや不満は残るがOK

シフラ:こちらも意外と炸裂していないかな?と最初は思うのだが不必要な煽りは半端ないです。サーカスで鍛えた、お客を喜ばせるテクニックがここにも見事に生かされているわけだ。みんなに「なんかよくわからんけどすげえ!」と思わせれば勝ち。ガッツポーズ。

バレール:やや期待はずれかな?暴走している感が先に立ちますよね。

ブレンデル:ブレンデルの録音を昔タワーレコード新宿で見つけた時は目を疑いましたな。若気の至りというやつでしょう。YouTubeの紹介文に「悪くない。丁寧な演奏。」と書いてあります。確かに丁寧に弾いているかも。でもやはりブレンデルにはテクニックが足りない。

アラウ:アラウの録音を昔タワーレコードで見つけた時は目を疑いましたな。若気の至りというやつでしょう(ブレンデルに同じ)。でも期待値よりも技術はしっかりしてますよね。音楽はストレートに心の底にすっと入ってくる。

ムストネン:素晴らしいピアニストだけどこの曲には向いていない気がしますよね。1986年録音なんでこれも若気の至りというやつでしょう。かなり速いテンポで始まるんで最初はおおおおっと期待が煽られるんですが嵐のミスタッチ&ごまかし音多数で自滅。ここぞというところでことごとく外れる音に茫然自失。おそらく本人が一番茫然自失。「スタッカート炸裂」ムストネン節も、時折現れるものの、まだまだ熟成していない。でもいいよ、ミスタッチも音楽だ。

ラン・ラン:18歳の時のテレビ放送。まあ悪くはないけど・・・。って感じですね。そう、演奏はそう悪くないんですがね。なんというか、興奮しない。

というわけでいろいろ聴いてみましたが、掘り起こしていくときりがないのでとりあえず今日はこれぐらいにしておきますわ。

個人的にはポゴレリチの90年のライブが一番「重戦車的」で好きですね。あとここだけの話、ミスの嵐ムストネンも悪くないかも?と思ってしまいました。

最後におまけ。2015年のポゴレリチ、ウィーンの隠し撮り。若い頃ほどエネルギーはないがこちらも素晴らしいっすよ。脱力の鬼ですな。楽譜ぼろぼろ。いやほんとポゴレリチのスピードが上がったのは本当に喜ばしいことです。