ハイティンク89歳、シカゴで転ぶ。

ベルナルト・ハイティンクはいま世界で最も愛される指揮者の一人です。いわゆる超高齢で現在89歳。間もなく90にならんとする。

先日、10/25の木曜日、シカゴ交響楽団のコンサートで後半のブルックナーの6番を演奏し終わったあと、指揮台から降りる際に足を踏み外して転んでしまったそうです。

ニュース:
https://chicagoontheaisle.com/2018/10/26/haitink-takes-a-misstep-on-the-cso-podium-but-not-in-grand-turn-through-bruckner-sixth/
https://www.chicagotribune.com/entertainment/music/reich/ct-ent-cso-haitink-review-1027-story.html

上のChicago on the aisleにはdoubled-overと書いてあるから、前屈みになって手を突いた?という状態になったのかと思われます。

As the eminent Dutch maestro, 89, apparently drained by the experience, was shaking hands with several players, he lost his footing on the step at the side of the podium and doubled over onto the stage. In an instant, the audience’s roaring ovation turned to a mass gasp of horror.
89歳のオランダの巨匠は演奏後、疲れ切った状態で数人のメンバーと握手をしてたが、指揮台脇から足を踏み外し、ステージ上に崩れ落ちた。その瞬間、総立ちになって大喝采を送っていた聴衆は恐怖で息をのんだ。

ちなみにこのコンサートです。シカゴ交響楽団の公式ページ:
https://cso.org/ticketsandevents/production-details-2018-19/chicago-symphony-orchestra/haitink-bruckner-beethoven/
前半はポール・ルイスがベートーヴェンの2番の協奏曲を弾いていたのですね。もしかするとポール・ルイスも後半は客席にいたのかも。

老人が転んで骨を折ったりしてしまいますと大変なことになるのですが、結果としてこのときは大丈夫だったそうです。周りのヴァイオリン奏者たちが助け、しばらくして立ち上がると、舞台監督たちに助けられ舞台袖へ自力で。そのあと、一人でまた歩いて出てきたので、会場は大いなる安堵と感動に包まれた模様。よかったですね。怖かったですね。

ハイティンクについて知らない方のために以下蛇足。ハイティンクはオランダの指揮者。コンセルトヘボウを長年率いたことでも知られています。そのほかグラインドボーンやシュターツカペレ・ドレスデンなんかでも音楽監督を務めました。今はもうどこの音楽監督もやっていません。高齢だし、客演だけで十分インパクトある存在。

今回のシカゴ交響楽団の演奏会は、ハイティンクが今シーズンアメリカに客演する唯一の機会なんだそうです(ちなみに27土曜にも同じ公演があり、明日30火曜も同じプログラムで公演がある)。

指揮者っていうのはものすごく大変な仕事で、プライドのめちゃ高いオーケストラ奏者達を前に、自分の音楽を伝え、作り上げるということをしないといけないわけです。オーケストラに語りかけながら、うまく自分の音楽を作り上げて行く必要がある。通常ですと「それは納得行かない!」というオケのメンバーが必ずいる。ひどい場合はほとんどの奏者がそっぽを向いてしまうケースもあります。

まるで世界の縮図、世界平和はついに訪れないわけだ、と思いますよ(ちょっと跳躍してますかね)。

しかし、ハイティンクはオーケストラ奏者から愛される存在だと聞いています。超うるさ型が揃っていて「神様ですら音楽監督になるのは難しい、最初はよくても一年後にはみんな文句を言い始めるだろう」とすら言われるオーケストラ、そう、ベルリン・フィルの人たちも、ハイティンクが指揮する時には多くのメンバーが演奏したがる、とベルリン・フィルの中の人から聞いたことがあります。これは十年ぐらい前の話だけど、そこまで大きく変化はしていないでしょう。

あ、でも「ハイティンクの人気があるっていうのは他の指揮者よりはましっていう意味だからね」とかまたそういう嫌みを言われるかもしれませんけど。