コンクールで大切なことは、優勝よりもその後なのである

ジュネーヴ国際コンクールが近づいています。ジュネーヴ国際出身のピアノの有名人といえばアルゲリッチ、ポリーニ、グルダ、ショルティとかでしょうかね。ショルティは指揮者としての方がはるかに有名ですけど。あとはエマールとかゲルナーとか。最近では・・・誰ですかね。萩原麻未が優勝したのは2010年でしたね。

ジュネーヴ国際といえば、どちらかといえば管楽器部門の方が有名かもしれませんね。アンドレやらブルグやらパユやらがいますからね。

で、そのもうすぐはじまるコンクールの出場者一覧を見ましたらアジア人の多いこと多いこと。全45人の出場者中(プレセレクション後)の国別で見ますと

韓国15
日本8
フランス5
ロシア3
中国2
香港2
台湾2
ラトヴィア1
英国1
イスラエル1
ルーマニア1
イタリア1
タイ1
カナダ1
フィンランド1

https://www.concoursgeneve.ch/eng/people_types/candidates_piano_2018

となっておりまして実に1/3が韓国。アジアだけで半分を超えています。アジア人大好き。

このコンクールのプロモーションでバックトラックに関係者(事務局長)のインタビューが掲載されました。これです。

https://bachtrack.com/interview-schnorhk-concours-geneve-septembre-2018

これを読んでいて思ったのですが、最近のコンクールはどこも生き残りにやはり必死であるということですね。そのコンクールに有力なピアニストが来なければ、あるいはコンクールから有力なピアニストが出ていかなければ、コンクールとしての権威が落ち、参加者の質が落ちていく、そういうことなわけです。

コンクール優勝後のサポートの分厚さをアピールしていますが(コンサートをたくさん開けるようにしますとか、音楽事務所やコンサート主催者、あるいはメディア、医療関係者、弁護士なんかにも紹介しますよ的なことも書いてある)、優勝、はい終わり、これ賞金、では世の中から注目されないし、タレントも集まらない。

また特徴として室内楽があることもアピールしていますが、最近室内楽を取り入れるコンクールも増えてきましたね。ピアニストはどうしても一人でこもってピアノを練習するだけになりがちで、コミュニケーションを取るのが苦手になりがち。

指は超高速で回っても室内楽的なコミュニケーション、他の演奏者とのコミュニケーションが全くできない人、けっこういるんですよね(音楽的にも、現実的にも)。それでは将来の仕事に差し支えがあります。あいつとはまともに会話ができない、という噂が立ちますと、その人のキャリアはどうしても伸びて行きません。

あ、そうそう、それで思い出したんですが、先日ソウルであるコンサートホールのマネージャーと話していたとき、韓国人のピアニストはソリスト嗜好が強いから、室内楽が弱いんだよね、ということを言っていました。これは大問題です。それから韓国人はコンクールで今すごいっすよねと言ったら、いやー、みんなコンクールで優勝してたり入賞してたりするから、コンクール歴があるからといって全然有名になれなかったりするんですよ、ということを言っていて、なるほどなあと思いましたよ。コンクールで強い国ならでは悩みだ。コンクール受けまくるのも良し悪しですね。

コンクールのあとにピアニストに待ち受ける人生やコンサートは、第一にそのピアニストの技術や芸術性ですが、それと同じぐらい「人間関係」で回っています。

コンクールを受ける人は、コンクールで優勝することだけを目的にしては、先がないですよ。その事は忘れないようにしてください。人間として成長しなければ先がない。またソロだけでは先がない。音楽家同士、あるいは音楽関係者とのコミュニケーションがうまくとれないと、難しい。

いや、なんか説教臭くなったところで本日はおひらき。