サイモン・ラトルが若い音楽家に送る7つのアドバイス

BBCのウェブサイトにサー・サイモン・ラトル(指揮者)の言葉が掲載されていました。そのタイトルもずばり、若い音楽家に送る7つのアドバイス。

ラトルと言えばベルリン・フィルを率いた人。言ってみればもう「あがり」の状態の音楽家ですよね。登り詰めた先にあるのはなんなの?もう本当に好きなことを好きなだけすればいいじゃないですか!っていう感じ。でもまだ若いし、メータやハイティンクのような長老になるにはまだ時間がかかりますかね。

というわけで、ピアノの話題とは少しずれるかもしれないけど、面白そうなのでささっと訳してみました。誤訳があったらすいません。指摘して下さい。若い人はどうぞご参考に・・・。

個人的には、人はあなたを助けてくれる、って言っているところが好きだったな。なんとなく。

そう、凄まじい競争社会かもしれませんが、人の優しさって、ありますよね。そういうのに触れた瞬間は本当に心がじわっと温かくなる。トップ中のトップの世界でもそうなのかと思うと感慨深い。

というわけでどうぞ:

1 あなたが情熱をささげるのは音楽かもしれないが、人々との関係も同じぐらい重要
バランスを保つ必要があります。音楽は人生であり人生を表現したものであるということを憶えておくのはいいことです、その逆ではなく。多くの音楽家にとって、音楽に逃げ込むことはとても簡単です。一瞬にして満足できるし、没頭できるからね。でも人生の終わりになれば、家族や愛する友人達のことをあなたは思い出すようになるでしょう。コンサートをすることではなく。

2 誰しも、めちゃくちゃになるときはある。それとどううまく付き合っていくか
最悪の経験をしたことがない人はいないと思います。そこを抜け出さないといけません。本当に難しいのは、最悪の経験によってめちゃくちゃにされてしまって立ち直れなくなってしまうこと。悪い経験をすると自信はゆらぐし、下向きのだめスパイラルに容易に陥ります。でもそこから抜け出せない人はいません。

3 ほんのちょっとだったら弱さを見せてもいい
30年前初めてウィーンフィルを指揮したとき、私は絶望的なまでに緊張しました。歯医者に行くことや死ぬことさえ、これよりはましだと思ったぐらいです。だから最初のリハーサルでは休憩が来るまで「おはようございます」以外は絶対に何も言わないと決心しました。

そして休憩の時、チェロの首席奏者が私の方を見てこう言ったんです「とても楽しんでいますよ私たちは」。私の返事「本当に?でも私はものすごく緊張しているんです。どうしたらいいか全くわからない。」チェリストの答え「サイモン、緊張しないで。ぼくたちはあなたと一緒にいい演奏をしたいんですよ。ぼくたちも緊張している。だから君が緊張してどうする!」本当に温かい言葉でした。私たちはみな一緒なのだという事を思い起こさせてくれて本当に助かりました。

私たちは誰しも問題を持っていますがそれに立ち向かわないと行けません。そして誰もがそのことを理解してくれます。あなたが少しだけ弱いところを人に見せたとき、他人に親切にしてもらえることにきっと驚くでしょう。

4 驚くべき音楽家であることと、素晴らしい人間である事とは別
私は19歳で王立アカデミーを離れましたが、本当に世間知らずだった。27歳の時になって初めて、自分が雇用者ではなく国民保険の支払いをしなければならないという事を知ったのです。ある晩、私を刑務所に送るか、何千ポンドもの罰金を支払わせるべく、一人の女性が尋ねてきました。彼女は私を見てかわいそうになり「オーマイゴッド、この男は本当にバカなんだわ」といったのです。

大切なことを知らない。これは本当にあり得ることです。多くの音楽家たちが、人生の重要な事を知らずに学校を卒業しています。

5 世界的な音楽家ですら、アイデンティティの危機に陥ることがある
20代のころ、私は「ジキルとハイド」のようなものを自分の中に抱えていて、自分の中の音楽家が好きかどうかわかりませんでした。自分の演奏を聞き返しては「こいつは一体誰だ?」と考えていたのです。

なので私は20代の半ばのころ活動を一旦停止し、1年間音楽なしに生きていられるかを試してみたのです。本当に音楽とは私にとって大切なもので、私は音楽なしではバラバラに砕け散ってしまうのだろうか?私は文学を学びました。3学期の長さ、一年の間音楽を聴かないと決め、自分を試したのです。

もしも音楽に代わる何かがあれば素晴らしいことだと思ったのです。音楽抜きで生き抜けたのはとても嬉しかった。音楽は麻薬のようなものだったから。でももちろん、再び音楽を聴いたとき、ブライトン・フィルの演奏による英雄交響曲だったのですが、私は声を立てて涙を流さずにはいられませんでした。周りの人の存在が自分の中から消えてしまうほどでした。音楽の力に本当に圧倒されたのです。それ以来、ジキルとハイドのような感覚は私から消えました。

6 仲間の音楽家との結びつきは強力
お互いの事を深く知り合うようになる職業は滅多にありません。名前を知らなくたって、とても深いところでわかり合える。音楽家達は、この難しく、深遠で、強烈な事実とうまくやりあっていっている。人々の非常に深く重要な事を、普段のごくささいな事を全く知ることなしに理解し合うことができるのです。

7 成功への秘訣とは・・・。
死ぬほど働くこと、好奇心旺盛であること、そしてあなたの周りにいる人たちはあなたが考えるよりもずっといい人たちかもしれないと言うこと。この職業の人々はみなとても親切です。時にはその親切がうざいかもしれないけれど、受け入れるべきです。

みなさんにグッドラックを。もしもあなたがこの職業を選ぶのなら、多くの人たちが助けてくれる。私たちは助けたいと思っています。なぜならみな同じ仕事をしてきたし、今もしている。同じ船に乗った仲間達なのです。そしてそれをあなたは信じていい。

なかなか味わいのある言葉だと思いませんか。

下手な日本語より原文が読みたい方は以下から:
http://www.bbc.co.uk/programmes/articles/2MkVJkRV3DSbQMRdsjSBwBV/seven-essential-pieces-of-advice-for-young-musicians