レヴィット、新しいアルバムについて語る

イゴール・レヴィットも、いま最ももてはやされるピアニストの一人でしょうか。日本ではなかなかリサイタルが実現していないようですが。

神経質そうな顔つきで、演奏もいわゆるロシア人の豪放なピアニズムとは距離を置いている感じ?インタビューでもやや気取った発言が特徴的と言えましょうか。きざなんだよきざ(言葉が古い)。そう言うのがたまらん、という人にばっちりはまると思います。
 
レヴィットが新しいアルバムについて語っているインタビューを読みました。昨日に引き続きニューヨーク・タイムズ紙。

To Cope With Loss, a Pianist Mined the Music of Life Itself
https://www.nytimes.com/2018/10/12/arts/music/igor-levit-life.html
(喪失感から抜け出すために。人生の音楽そのものを掘り起こしたピアニスト)

ライフ、という名前の新しいアルバムは、友人がバイク事故で2016年に死んでしまった、その衝撃がきっかけとなって生まれたのだそうです。

公式のトレイラーはこれ:

いやー、かっこうつけてますねえ。きざだわー(言葉が古い)。

何があっても太陽はまた登るし、人生は続いていく、という意味合いも込められている、と。曲目が最終的に決まるまで三、四十回ぐらい変更に次ぐ変更を繰り返したそうです。悩んだんだろうな。

そのうちの一つが、バッハのシャコンヌ。もちろんあの有名なヴァイオリンのためのシャコンヌです。レヴィットはブラームス編曲のシャコンヌを選択しました。これは左手のためだけに書かれた曲です。ブゾーニの、ピアノのための作品としては、より有名な同じ曲の豪華絢爛な編曲ではなく、むしろマイナーなブラームス編をこのアルバムに選んだのは、ブゾーニは技巧的過ぎてなんか違うと感じたからだそうです。

ブラームスはブゾーニよりも、もっと裸である、と語っています。わかりますね。ブラームスの編曲は左手しか使わないということもあるけれど、もっとピュアな感じがするから、人生とか死とかを考えるにはこっちのほうが向いているかも。

その他パルジファルからの編曲の演奏が恐ろしく辛い、ということとかも語っていて、なるほどなという気になりますけれど、最後に書いてある言葉もなかなか刺激的。

それは「ブゾーニの協奏曲を弾く」と確約していることです。いま話し合っているが、必ず弾く。と。

うわー!ピアノマニアは絶叫しますが、主催者も絶叫しますね。別の意味で。一時間以上かかる長い曲だし、男性合唱必要だし、ピアノパートもばりばり渋いし、集客も望めないし。・・・・そう、やるならば集客は度外視して、腹をくくってやるしかない。だから「話し合っている」という現状になろうかと思います。ヨーロッパでも手を挙げるオケやら主催者やら、なかなかないと思うな・・・。うん・・・。誰か日本でもやるやついないか。

この曲について詳しい事が知りたい方はwikipediaでもご覧下さい。