なぜ、ローラン・カバッソなのか。熟慮型ピアニストの魅力。

世の中には本当に星の数ほどピアニストがいますよね。素晴らしいピアニスト、普通のピアニスト、美人ピアニスト、自称ピアニスト(涙)などと千差万別です。そんななか、なぜローラン・カバッソなのでしょうか。

ローラン・カバッソは、音がきれいです。聴いていてうっとりします。音だけを聴いてうっとりできるという人はあまりいません。

カバッソのもう一つの特徴といいますか、強みといいますか、それは、何度もこのサイトにも書いていますが、今年のショパン国際コンクールで優勝したチョ・ソンジンを優勝に導いた名教師でもある、ということです。

「教師はあくまでも教師であって本人ではない」と言われればそうかもしれません。しかし教えるということは、それだけ知っているということでもあります。

直感型と熟慮型

ピアニストには直感がほぼ総て、というタイプもいて、例えばホロヴィッツ、現役ですとパスカル・ロジェ、ユジャ・ワンなどもそうなのだと思うのですが、主に直感で音楽を作っていく。またこういうピアニストはたいていの場合、指が回らないとか、どうしてもここが弾けない、とかそう言うこともなく、たいがいの曲は難なくサラッと弾けてしまう。なので他人を教えることがあまり得意ではありません。またサラッと弾けてしまうということで、深く音楽を掘り下げることもあまり得意ではありません。(当然ですが、こういうピアニストは駄目だと言いたいわけではありません。大好きです。)

そうではなく、自分で悩みながら作り上げていくタイプのピアニストがいます。その代表例がミケランジェリやブレンデルでしょう。与えられた楽譜を見てさっと演奏することはあまり得意ではないが、考えを注入して、時間をかけて演奏を練り上げていく。こういった人たちは考えているから、それを伝えることができる。つまり名教師となる素質がある。ミケランジェリはかつてポリーニやアルゲリッチを育てた。ブレンデルはいま、キット・アームストロングなどを育てている。

カバッソはどちらかというとこの、後者の側に属するピアニストでしょうか。

考えぬいて作り上げる

考えぬかれた演奏というのは、聴いていて納得させられるものです。演奏を聴いて深い満足感を得られる。なので音楽の深みが求められるベートーヴェンやシューマンなどで高い評価を得ているのでしょう。

今回もJTアートホールではベートーヴェンのディアベリ変奏曲という、超大作を演奏します。フランスの批評家たちが絶賛し、ブラインドテストでも1位に輝いたこともある演奏です。ぜひお聴きいただきたいと思います。

そして世田谷美術館ではシューマンの森の情景を含む「森」のプログラム。こちらも、考えられ練り上げられた演奏を聴くことができるでしょう。

公演の詳細とチケットは以下から:

https://www.nemo2sha.com/concerts/

チケットは昨日より販売しております。