バレンボイム76歳に

昨日はバレンボイムの誕生日だったそうです。11月15日ということは蠍座だね。蠍座の男ですね。すいません星座に全然興味ないのですが、適当に書いてしまいました。

バレンボイムはフルトヴェングラーに見出された天才少年。もっと小さいときはマルタ(・アルゲリッチ)とアルゼンチンのユダヤコミュニティで一緒に遊び、パーティーなどでピアノを二人で一緒に弾かされたこともあったそうです。

もちろんいまや泣く子も黙る、押しも押されもせぬ大物。指揮者としても、ピアニストとしても一流の場で活躍している稀有の存在です。素晴らしい語学力、ずば抜けた政治力で、欧米の楽団に君臨している。生ける君主論。

その才能にけちを付ける人ももちろんたくさんいますが、ともかくドン、って感じがする、数少ない存在であるかと思います。ローザス(かつて一世を風靡したコンテンポラリーダンス・グループ)を率いるケースマイケルもバレンボイムとの会話では恐ろしい思いをした、みたいなことを言っていました。威圧的だったそうです。ザッツ帝王。

実際にバレンボイムの指揮でベルリンでオーケストラで演奏したという私の友人は、バレンボイムは忙しすぎて、自分がいまどの言語で話しているかが、最初はわからないのではないかと思う、と言っていました。

最初はドイツ語もすごくあやふや、でもリハーサルをしているうちにどんどん言語が明瞭になっていく。そしてどんどん音楽も明瞭になってくる。本番中もさらに明瞭になっていく。本番さえも、リハーサルを兼ねている(どんどん良くなっていくという意味で)、とでも言うべきではないか、と言っていました。

面白いですね。日本にいると、英語を話すことが最終目標になっていたりしますけど、ヨーロッパでは英語を話すことは当然、4カ国語や5カ国語を流暢に操る人はいくらでもいて(言語が似ているということもあるのでしょうけれど)、バレンボイムもその一人。バレンボイムが何カ国後を話すのかは忘れましたけど、多分スペイン語、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語ぐらいはできると思います。ロシア語も少しできるんだったかな?忘れた。

広大な知識と言語能力を用いて繰り広げるバレンボイムの音楽は、批判は多けれど、やっぱりすごいなと思いますよ。日本にはなかなか来てくれないのが悩みでしょうか。

最近サントリーでやったわけわからんブルックナーシリーズとかそういうのではなく、普通にピアノリサイタルをしに来てほしいなと思うのですが難しいでしょうかね。高すぎるのか、それとも忙しすぎるのか、アジアに興味が無いのか。バレンボイムが32曲のベートーヴェンのソナタを弾く、っていうシリーズが企画されれば、けっこう売れるんじゃないかと思うんですよね。会場はサントリーホール。

最後にグラモフォン誌に掲載されていたラン・ランのコメント(ラン・ランとバレンボイムがつながっているというのも不思議な気分ですが。ラン・ランも政治的に立ち回ろうとしているような気がするから、バレンボイムから学ぶことは多いでしょう。)

He’s not a pianist who conducts, or a conductor who plays the piano: he’s a total musician. When he discusses a passage in a Beethoven piano sonata, he brings not only a long and detailed knowledge of that particular work but also the experience of having conducted all the symphonies, Fidelio, the overtures, of having played all 31 other piano sonatas, the violin sonatas, the piano trios, the piano concertos…He is a colossus in the world of music – long may he continue to share his musicianship, courage and deep humanity with us all.’

彼は指揮もやるピアニストではなく、ピアノも弾く識者でもない。完璧な音楽家なのです。ベートーヴェンのピアノ・ソナタのパッセージについて彼が語るとき、その作品に関する非常に細かな知識から話をするだけでなく、全交響曲、フィデリオ(ベートーヴェンの唯一のオペラ)、序曲、他の31曲のピアノ・ソナタ、ヴァイオリ・ソナタ、ピアノトリオ、ピアノ協奏曲など全てを演奏した経験に基づいて話をするのです。彼は世界の音楽界の巨人です。彼の音楽家精神、勇気、そして深い人間性を私達にずっと伝え続けてほしいと思います。

https://www.gramophone.co.uk/musicians/artist/daniel-barenboim-50314