リヒテルの1960年、カーネギーホールデビューコンサート

つい先日、リヒテルの103回めの誕生日だったということで、1960年のカーネギーホールデデビューコンサートのポスターをソニー・クラシカルが載せていました。見てみたいでしょう?これです。

見て下さい。なん5回連続!しかも下のタワーレコードのURLを見ますと、プログラムも強烈。すごいレパートリーだ。さらにこのページには面白いことが書いてあるのですが、テンペストの3楽章で記憶を忘れて弾き直しているとのだそうです。

http://tower.jp/article/feature_item/2017/09/01/1104

おおお、記憶力がよすぎて困る、生き地獄だと言っていたリヒテル、楽譜を見て弾くようになるのはもっと後年ですが、この頃すでにこういうことがあったのですね。これはすごいや(すごいと書いていいかどうかは分かりませんが)。しかもテンペストの三楽章でミスったというのは、あああ、わかるわ、とこの曲を弾いたことのある人なら理解していただけるに違いない。

リヒテルですらこういう間違をするのだから自分が間違うのはしょうがないね、と自分を慰めて下さい。(でも免罪符にしちゃだめ。)

上のポスターを見てチェックすべき点はそのほか3点。

1:主催者がソル・ヒューロックであること。
伝説の興行主、ソル・ヒューロック!ここでも名前が出ている。すごい人だったんでしょうね。こういう人はだいたいあくがむちゃくちゃ強いザ・ビジネスマンだろうから、人としておつきあいはしたくないかも知れないけれど、でもいっぺんぐらいは見て(会って)みたかったなと思います。

2:チケットの発売期間が異常に短いこと。
最初の公演が10月19日なのに発売日は9月7日と書いてある。6週間弱しかないですよ。これで売れたんですかね。リヒテルは謎に包まれた演奏家だったから売れたのかな。あとヒューロックの名前で買う人も当然いるでしょうけれど、それにしてもこれは短い。カーネギーホールは2800席あるから、5公演で14,000枚ですよ。くらくらするようなすごい数。

3:チケット代金が異常に安いこと。
5回連続公演ということもあり、ホールの貸主カーネギーホールも、出演するリヒテルも安く受けたと思うのですが(ヒューロックはカーネギーホールを借りまくっていた常連だったろうから、その意味でも安くできたでしょう)、それにしてもチケット代安すぎません?
最高で5.9ドル、最安で2.0ドル。とんでもない値段ですよこれ。

当時の物価がどれぐらいだったのかと思って適当にしらべたらこういうページがあった。

http://www.garbagenews.net/archives/1064979.html

現在の食品の物価は1957年当時より4-14倍ぐらいみたいです。コンサートチケットと食品とでは違うかも知れないけれど、仮にチケット代金が5倍になったとしたら最高24.5ドル、14倍なら68.6ドル。

68.6ドルならまあそれぐらいかな、ちょっと高いな、という気もしなくはないけれど、24.5ドルぐらいならめちゃくちゃ安い。安い、安すぎます。・・・日本のコンサート料金ももう少し安くなるといいのにね。東京のコンサートはどれも高すぎて気軽にはなかなか行けない。