名曲コンサートの数をもう少し減らしませんか

英国のピアニスト、スティーヴン・ハフは世界でもトップクラスの演奏家です。しかし残念ながら日本での知名度は高くなく、昨年だったか、銀座のヤマハホールが主催してリサイタルをしたときもかなり空席が目立ったと聞いております。ヤマハホールは333席なので、そこですら席がまるで埋まらない、というのには驚きました。

ハフの最近のインタビュー記事、といっても今年4月の、ですが、を見つけて読んでみたらおもしろかったのでお知らせいたします。

「インターネット時代は便利だ。一瞬でウェブサイトやメールにアクセスできる。アートとは植物の成長のようだ。時間と場所が必要だ。」

「音楽家の生活には静寂が必要だ。静寂は音楽という植物にとって土壌のようなもので、土の手入れをしなければ、種は立派な根を張ることができない」

「クラシック音楽は簡単ではない。山が高いから人はそれに登るし登った時の達成感もある」

うん、こうやって短い文章だけを書き抜いてみるとなんだか間抜けな感じもします。

最後の一文を読んで思ったのですが、いま日本に溢れているクラシック音楽のコンサートはいわゆる名曲のものが溢れているように思われます。特に公立のホール。確かにホールに人を集めるのは簡単ではないですが、名曲を並べるだけ、っていうのは芸がないですし、主催する方もやりがいがあまりないのではないでしょうか。

世の中の人たちに面白いと思ってもらうためには、コンサートのプログラムももうちょっと趣向を凝らすべきなのではないでしょうか。いつも名曲ばっかりというのはつまらないですよ。もっと攻めようぜ!

でも、一部のマニアだけにわかればいい、むしろ素人とは来るな、というような秘密組織のようなコンサートだけになってしまうと、それはそれで障壁を必要以上に立てていることになりますし、広がっていかないのでよろしくないですね。バランスが大事。名曲があってもいいし、ちょっとひねったのがあっていい。

こんどエマールがオールドバラ音楽祭でやるめしあん「鳥のカタログ」のコンサートなんて、普通にやったら絶対にお客さんこないと思うんですが、「自然のなかで、朝3時から1日かけてやる」というふうにちょっと(ちょっと・・・)ひねりを入れただけでチケットは瞬殺なんですよ。

なので、スティーヴン・ハフ、みなさんもっと聞いてくださいね。日本人はどうしても英語圏のクラシック音楽家を低く見がちです。ポリーニも、アシュケナージもいいけれど、ハフもきいてください。

偏見はもったいないです。