ユジャ・ワン、著作権問題で春の祭典をキャンセル

ユジャ・ワンがヨーロッパでの春の祭典の、打楽器との演奏をキャンセルせざるを得なかったという話です。

なぜなのか。それはストラヴィンスキーの遺族(によって設立された財団)が、著作権侵害を申し立てたから、だそうです。つまり、ピアノと打楽器という編曲での演奏はストラヴィンスキー本人が書いたスコアから逸脱しているので、だめよというわけですね。書かれた音符通りに、書かれた編成通りに演奏しなければだめだというのです。

ユジャ・ワンからの公式な発表↓

これは時々聞く話で、ある打楽器アンサンブルがやはり「春の祭典」を自分たちで編曲してやろうとしたら、この財団とやらから横槍が入って、ぎりぎりまで交渉したが公演を中止せざるを得なかったという話を聞いたことがあります。そしてストラヴィンスキーの編曲はとかく難しい、という話は複数の音楽家から聞くところでもあります。

ストラヴィンスキーに限らず、出版された楽譜以外の編成でやろうとしたら出版社から電話がかかってきて(どうやって知るんだろうと思うんですけど)、やめていただきたい、でなければ裁判、という話になったという話も聞きます。

ただ、このユジャ・ワンのケースは、結局ニューヨークとアナーバー(アメリカ)ってところではやるらしいので、そのあたりどう解決したのかが気になるところです。お金で解決したのかな?争って勝ったのかな?・・・アメリカだからといって遺族が簡単にOKするとは思えない。

著作権関係でいままで聞いた一番最悪な話は、ある現代音楽の作曲者自身が自作のリハーサル中に、よしここはこう変えよう、と言ったところ、リハーサルに立ち会っていた出版社が、「著作権侵害だから一音たりとも変えるな。変えたら裁判ね」と言った、という誠に不可解な話。

確かに出版社の言う事は正しいんでしょうね多分。詳しいことはわかりませんけど、法律的には正しいのかもしれない。でも、、、という気持ちになりませんか。さすがに本人目の前にしてそれを言う勇気はすごいと思うけど、やっぱりなんか違和感があります。

結局その時は作曲者とかそのリハーサル会場に立ち会っていた演奏家が激怒して、じゃお前んとこから全部楽譜引き上げるわとか言って、最終的には出版社が謝ったというおち。謝るぐらいなら最初から言わなければいいのに・・・。

その昔、ファジル・サイが有名になったのは自分で編曲したピアノ一台、多重録音のCDでしたが、ああいうのはもうできないということですかね。昔と違って今は誰がどんなCD出すとかすぐ調べられちゃうし、知らずに出して、あとから著作権!とか言って訴えられたらえらいことになります。あ、でもファジル・サイのやつは公式に許可もらってたのかもしれませんね。昔はそこまでストラヴィンスキーの遺族も厳しいことは言わなかったのかもしれない。

難しい世の中であります。