ユジャ・ワンとウィーン・フィルがヴェルサイユ宮殿で演奏

ヴェルサイユ宮殿には行ったことがありますか。個人的には一回だけ行ったことがあります。でかすぎてプチ・トリアノンに着いたころはへとへとでした。

ユジャ・ワンとウィーン・フィルがヴェルサイユ宮殿で、今月11日に演奏しています。宮殿の中のオペラハウスです。これね。
http://en.chateauversailles.fr/discover/estate/palace/royal-opera-house#receptions-and-restoration-work

11月11日と聞いてその日が歴史的にどれほどの意味を持つ日なのか、すぐに言い当てることができる人はどれほどいますでしょうか。

ポッキーの日?ベースの日?ドストエフスキーの誕生日?いいえ、第一次世界大戦が終結した日です。そしてそれは1918年でした。つまり今年の11月11日は第一次世界大戦が終結してからちょうど100年が経過したという記念すべき日だったのです。日本人の私は世界史も勉強しましたが、第二次世界大戦の終結した日は覚えていても第一次世界大戦は覚えていなかった。不勉強を恥じたいと思います。

そんな意味のある日にウィーン・フィルとユジャ・ワンがヴェルサイユ宮殿で演奏をしていた、と。誰がどういう風に企画したのか。ヴェルサイユ宮殿でやる、ということの意味は、なかなか考えさせられますね。4分のニュース映像はこちら。

プログラムは基本的に戦争や平和を想起させるような小品あるいは抜粋で固められていました。

ウィーン・フィルのサイトにあるのをそのまま貼るけど
https://www.wienerphilharmoniker.at/concerts/concert-detail/event-id=9892

こういう感じ。

Wolfgang Amadeus Mozart
Ouv. Die Zauberflöte

Claude Debussy
Trois Nocturnes, “Sirènes”

Gustav Theodore Holst
Mars, the Bringer of War, from The Planets

Richard Wagner
Trauermarsch aus “Götterdämmerung”

Maurice Ravel
Concerto pour la main gauche

Ralph Vaughn Williams
Dirge for Two Veterans

Ludwig van Beethoven
Missa solemnis in D-Dur, op. 123, Agnus Dei

Charles Ives
The Unanswered Question. A Cosmic Landscape (Orchestral Version 1930-35)

ユジャ・ワンが弾いたのはラヴェルの左手のための協奏曲。これもまた戦争に多いに関係のある曲だ。ご存知の通り、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの依頼で書かれた作品ですね。戦争と深い関係があり、歴史を振り返り、人類のこれからを考えて行くのにうってつけの曲でしょう。

ユジャ・ワンはでも、(多分)このコンサートに関するインタビューで、私この曲の暗いところが好きなんですよと言っていて、わりと政治的には際どいと言うか、平和のためのコンサートなのに、そこだけを切り取ったらあまり褒められないかもしれないコメントをしているんですよね。ちょっと残念ですかね。衣装もゴールデン、でもスリットは少なそうだからそれなりに配慮したのでしょう。許可する。(まいど偉そうですいません)

このコンサートはアイヴズの「答えのない質問」という瞑想曲のような、あるいはレクイエムのような作品で終わっていて、うならされました。人類と戦争の歴史について思いを馳せるのにこれ以上ない選曲かもしれない。

この曲を知らないという方はこちらからどうぞ。オロスコ=エストラーダ指揮フランクフルト放響。