ピアニストに求められる能力:プレッシャーをはねのける力

あなたはピアノを弾きますか?ピアノを弾く時、緊張しますか?「あの人、本当は上手なんだけど・・・。あがり症らしくて、舞台の上ではあまり・・・。」とか、「練習の時は完璧に弾くんだが本番ではミスが多い」というような人が身近に居られたりしますか。緊張も実力のうちであります。緊張に打ち勝てる人でないとプロとしては務まりません(プロでも常に勝てるとは限らないけれど)。

個人的にもピアノを弾きますが、特に自分がピアニストを目指していた頃、人前では緊張してぼろぼろになることもありました。ベートーヴェンの31番のソナタ、最後のフーガでしへどもどになった経験もあります。あれは本当に恐ろしい経験だった。つくづく、ピアニストになれなくてよかった。

うまい人たちは緊張しないんだろうな、と思う人がいるかもしれませんが、それは間違いです。世の中に緊張しない人はいません。世界最高の、という勲章のような言葉をもらっているような演奏家でも、緊張します。緊張って、機械で測定できるものじゃないから、主観の問題になってきますが、多かれ少なかれ、みな舞台上では緊張しているんですよ。

舞台袖で、出演直前までジョークを言っていても、舞台の上では指が震えている、という瞬間を目撃した事があります。ポリーニは、特に前半は(おそらく)緊張から来る大きなミスが多い。アルゲリッチは「今日は弾けない」と舞台袖で言い出して周囲の人たちを凍り付かせることがあるそうです。私が目撃したときはリラックスしているように見えましたが。ただし室内楽公演でしたが。

というわけで、緊張しがちな人たちに捧げる一言を2つ。

(舞台を指して)「あそこは人生で最も孤独なところだよ」 ― ホロヴィッツ
(舞台を指して)「あそこはゴルゴダの丘なのだ」 ― ギレリス

なるほど!みなさん、楽になれましたか!・・・無理?