コンサート調律師が圧倒的に不足する可能性

ねもねも舎では世界のピアノ界のニュースなどを採り上げておりますが、実は調律の会社がやっているサイトだという事はご存じでしょうか。知らない方も居られるでしょうが、まあピアノが好きで書いているブログなんで、ご存じないからと言ってどうこうという訳ではもちろんありません。

しかし、調律師という職業について、このブログでももう少し採り上げようかなと思っています。といいますのも、調律師、特にコンサート調律師という職業は将来的に絶滅する危険性がある、そういう職業になりつつあるからです。

数え方にもよりますが、いま都内、あるいは近郊のコンサートホールで、コンサートのために日本の、そして世界のトップ演奏家を支えていコンサート調律師が一体何人ぐらいいるか、ご存じですか。

300名?100名?70名?いえ、50名もいません。そしてその数は減じる一方。

昨日戯れに若いコンサート調律師、例えば40代の技術者が何人いるかとカウントしてみたら本当に数えるほどしかいない事に気がつき愕然としたのです。ここにも潜む高齢化の現実。

ぶらあぼなどをごらんになればおわかりの通り、世間では猛烈な数のコンサートがあるのに、それを支えきれる数のコンサート調律師が、いない。いなくなってきている。

かつてはピアノがかなりの数の家庭にあった時代があった。そのような時代は、調律師もたくさん求められました。調律専門の学校を出て、訓練を受けた調律師が実際に多くいた。

そしてその中から、特に腕がいい調律師は、コンサートでの調律を依頼されるようになる。厳しい審美眼、技術を持ったピアニストたちによって鍛えられ、信頼を受けるようになり、コンサートでの調律を請け負うようになっていったのです。

これはたとえて言えば、街の車工場の整備士からF1の整備士になる、そのような感覚だと思って頂ければよいかもしれません。

街の車工場の整備士も素晴らしい仕事ですし、F1と比較するのは乱暴かもしれません。

しかしF1にはともかく莫大なお金も注がれているし、世界最高の車を最高の状態で走らせるためあらゆる技術が惜しげなく注がれている。コンサート調律師も、超高額な最高の楽器を操るすさまじい技術を持っている。縁の下の力持ち。彼らのおかげで、ピアニストたちはより一層舞台上で輝くことは出来るのだ(偉そうですいません)。

誇張でもなんでもなく、コンサート会場の裏で、ピアニストたちが調律師に向かい、ブラボーマエストロ、と声をかける事も少なくないです。そこにあるピアノを、一番輝かせられる人、それがコンサート調律師。

しかし、現状ではコンサート調律師の数が減っており、その年齢層が上がっているのです。ねもねも舎ではこれを危惧しています。そしてこれからのコンサート調律を支える若い調律師達が育って欲しいと思っています。

これからこのブログでも、コンサート調律師について、連日ではありませんが、折に触れ記して行きたいと思います。そして、若い人たちには、コンサート調律師について興味を持ち、ぜひこの世界へと足を踏み入れてきて欲しい。そのように思っています。

お金の事を書くのはどうかと思いますが、はっきりと書いておかなければいけません。コンサート調律師は確かに、IT長者のようにハイパーリッチになれる仕事ではないかもしれない。しかしトップのコンサート調律師になれば充分に稼ぐことが可能です。年収1000万も狙える。

なにより、コンサート調律師とは、日本や世界のトップ演奏家から信頼され、感謝される。そしてコンサート会場で感動を分かち合える素晴らしい職業なのです。