ユジャ・ワンの指揮デビューについて、マーラー室内管団員の証言

ユジャ・ワンはつつがなく指揮者デビュー(弾き振り)を果たしたようで、共演したマーラー室内管弦楽団の団員が、オーケストラのツアーブログでその模様を報告しています。

いや、無事に終わったようでよかったですね。ユジャ・ワンはアシュケナージのように指揮者としてではなく、あくまでもピアニストとして活躍して欲しいとは思いますが、いろいろ活躍もして欲しいところ。弾き振りをすることで、より音楽を広く理解できると思いますし(上から目線)、お客さんの気分も変わるし、いいことづくめっすよね。

世の中には、協奏曲をするときにオーケストラと全く対話できないピアニストもいますが、それではだめです。オーケストラはあなたの単なる伴奏ではなく、ピアノと同等、あるいはそれ以上に重要なケースさえもあるのだから、好き勝手して振り回すだけ振り回してはいけません。ユジャ・ワンも今回、オーケストラパートを普段以上に研究したことでしょう。それでますます彼女の演奏に磨きがかかればよいのだ。

たとえばアルゲリッチも、指揮こそしませんが、オケとの会話はすごくありますよね。見るだけでわかるほどだ。

若い頃はアルゲリッチも生意気とかいろいろ言われたと思うんですが、やがてうるさ型にも認められた(今でも、アルゲリッチの演奏スタイルが受け入れられない、南米のものはいいが他はNGという人もいますが、それはまあどうにもしようがないです。好き嫌いはあるんだし)。

ユジャ・ワンもやがて、保守的でうるさい人たちからもしぶしぶ認められる日が来るでしょう。他のピアニストとは完全に一線を画しているから時間の問題です。ドレスの問題があるから時間はかかるかもしれませんが、ユジャ・ワンほど弾けるピアニスト、いないから。いるなら紹介して!

Yuja Wang made her debut leading from the piano and as one can imagine, she was quite nervous about conducting; she let Matthew lead most of it in the beginning. She quickly grew in confidence, however, settled into her new role and the two of them developed an effective collaboration.

ユジャ・ワンは弾き振りのデビューをしましたそして、みなさん想像のとおり、指揮することに対してとてもナーバスになっていました。最初はマシュー(注:コンサートマスター)にほぼ全てを任せていましたが、すぐに自信を見せはじめ、指揮という新しい役割をしっかり担うようになりました。マシューとユジャは有意義なコラボレーションを生み出すことが出来たのです。

We played ten concerts and every single time for a full hall… and that brings me to the magic of Yuja. What an extraordinary pianist she is – so wonderfully effortless and virtuoso. Every evening she did something different, but with the same quality and joy. Also different every evening were her famous dresses. More than ten for sure; she definitely knows how to keep things spicy, too! The audiences really loved her, and we were all treated to some dazzling and at times moving encores, played with effortless spontaneity and charm.

全部で10回のコンサートがあり、全て満員でした。ユジャ・ワンのマジックを感じることができた。なんと素晴らしいピアニストなんだろう。無理が全くなく、素晴らしい技巧。毎回彼女は違うように演奏したし、クオリティは高く、悦びが満ちていました。もちろん毎回ドレスも違っていた。その数は10より多かったと思う。彼女は、どうやったら物事をぴりっとさせられるか、という事をよく知っているにちがいない。聴衆は彼女をとても気に入ったし、オーケストラも彼女の素晴らしい数々のアンコールで満ち足りた気分になりました。どの演奏も無理がまったくなく、自発性と魅力に溢れていました。

http://www.mahlerchamber.com/play/tour-diary/across-europe-with-yuja-wang