ピアノ協奏曲を一晩に複数演奏する時代

ピアノ協奏曲と言うと、オーケストラのコンサートにおいて前半に置かれるケースがこれまでというか、20世紀のコンサートにおける普通の形でした。もっともありがちなコンサートの形は、「短い序曲-ピアノ協奏曲-休憩-交響曲」ていうものだと思うんですよ。(かつて18世紀、19世紀のコンサートはこんな形ではなかったと伝えられていて、4時間とか5時間のコンサートもあったそうです)

なぜ序曲がついているかというと、ホールの空気を安定させる、という理由と、遅刻者救済計画でもあります。遅刻してくる人は必ずいますからね、その人が前半聴けないという悲劇から救うための敗者復活なわけですよ。

序曲中はピアノをステージの端に置いておけば序曲のあとにピアノを移動させるという時間が発生するので、ますますもって敗者はここで復活する。指定席までたどり着いて着席が出来る。静寂と集中を好むクラシック音楽ならではの光景だ。

そのコンサートの形が近年崩れてきています。もう聴衆も飽きてきたんだろうねこういうのには。デニス・マツーエフが1日でラフマニノフの協奏曲を全部やる、とかそういうのが増加傾向にあるわけです。

昨日もパスカル・ロジェがピアノ協奏曲3曲を一晩で指揮&ピアノで演奏したそうですし。いやK386は短いロンドですけど、1曲としてカウントすれば3曲。

で、話をスイスへ。ヴェルビエ音楽祭は、夏に開催されるスイスの最も有名な音楽祭の一つです。今年が25回目だったわけですが、来年のプログラムが発表されました。全プログラムを読みたい方はここからどうぞ(pdfです)。

私も今朝ぼーっと眺めていて気がついた点がいくつかありましたが、トリフォノフ&ババヤンのコンサートシフのコンサートに注目したい。

これがトリフォノフ&ババヤンのプログラム:
2018年7月21日

Robert Schumann (1810-1856)
Andante et Variations pour deux pianos op.46

Johann Sebastian Bach (1685-1750)
Concerto pour deux claviers en ut mineur BWV 1062

Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
Concerto pour deux pianos et orchestre en mi bémol majeur K 365

こちらがシフのプログラム:
2018年7月21日

Joseph Haydn (1732-1809)
Symphonie N° 44 en mi mineur Hob. I:44 « Trauer »

Béla Bartók (1881-1945)
Concerto pour piano et orchestre N° 1 Sz 83

Joseph Haydn (1732-1809)
Symphonie N° 90 en ut majeur Hob. I:90

Béla Bartók (1881-1945)
Concerto pour piano et orchestre N° 3 en mi majeur Sz 119

フランス語でごめんよ。でもほら・・・ね?協奏曲が複数ある。こういうのは、さすがにいわゆるオーケストラの「定期演奏会」と呼ばれるコンサートではまだ多くないと思いますけれど、音楽祭とかでは確実に増えてきているし、これからも増えていくんではないかと思います。

2曲(あるいは3曲)を弾くだなんてとんでもない、人間のする事ではない、というピアニストもいますし、ピアニストの伴奏をするだけなんてやだ、っていう指揮者もいるんですけれど、だが、世のニーズは、協奏曲1曲だけしかない時代から、複数演奏する時代へ。

それにしてもシフの方は惜しいですね。バルトーク3曲全部やってほしかったですね。いろんな意味で無理でしょうかね。2番はどうしても敬遠されがちなのが残念ですね。だれか本当に、1晩で3曲全部、ってのをやって欲しい。