トリフォノフが自作のピアノ協奏曲をカーネギーホールで

いまからちょうど一週間後、トリフォノフが自作の協奏曲をカーネギーホールで演奏します。指揮はゲルギエフ。マリインスキー劇場管と。

https://www.carnegiehall.org/Calendar/2017/11/15/0700/PM/Mariinsky-Orchestra/

現代において作曲することの意味ってあるんだろうか、と思うことってありませんか。あらゆる可能性は探し尽くされていて、新しいことなんて出来っこないし、と思うことってありませんか。

特に現代音楽、芸術音楽と言われるようなジャンルは難しい状況です。世の中停滞しているし、新しい音楽なんて別にいらない、と思ってる人がほとんどのはず。

そう、つまりこういう事です。専業の作曲家ですら仕事がない状況なのに、トリフォノフという著名ピアニストが作った曲となると、カーネギーホールで、しかもゲルギエフの指揮で演奏する機会が与えられる。そして満席のようだ。これは不公平だ!ていうか不正だ!!ゲルギエフ反対!!

・・・まあ落ち着きなよ。はい、世の中は不公平です。トリフォノフは、お客様を呼ぶことが出来る。これかなり重要。そう、売れてるんだったら本人のやりたいことをやらせてあげたっていいじゃない。曲がひどい出来だったらもう演奏しなけりゃいいんだから。

ちなみにこの曲が初演されたのは2014年です。初演だけで終わらず、こうやってまた演奏されているわけだから、評価が爆発的に低いというわけではないでしょう。成功と言ってよろしいかと思います(昨年夏のヴェルヴィエ音楽祭でこの曲の演奏に立ち会った音楽家は「かなりよく出来ている」と褒めていました。「もちろんラフマニノフやらプロコフィエフやらの音楽のミックス的な雰囲気はあるけれど」)。

この成功に気をよくして、トリフォノフが今後さらによい作品を出してくる可能性もある。これもまた重要。チャンスが繰り返しあることで人は劇的に成長できる。売れている以上、チャンスは本人の前にたくさんあるわけで、それを活用しない手はありません。チャンスを糧に、成長する。

もちろん、売れなくなったらチャンスはどんどんなくなっていきます。はい、それはもう、転げ落ちるように。ピアニストには常に「売れなくなったらどうしよう」と言う、ひりひりするようなプレッシャーがあるわけです。トリフォノフも自覚していないわけないです。プレッシャーと戦いながら演奏して、さらには作曲もしているですからトリフォノフ、偉い!!今後の成長と活躍に期待したい。演奏姿勢が悪すぎるけど。

ちなみに以下のインタビュー動画によりますと、トリフォノフはそもそもピアノをやりたかったわけではなく、作曲がやりたくて、その手段としてピアノを始めた、というようなことを語っています。字幕もついてるから大丈夫。

ともかくトリフォノフの協奏曲については、ポジティブに捉えていいと思うんですよ。トリフォノフも、作曲し、実際に演奏することで音楽に対する理解が深まるでしょうし、いろんな人からアドバイスをもらって成長できるでしょうから、本人が作曲をしたい、という衝動がある以上、そして発表できる機会を与えられるのであれば、どんどん作曲してみればいいと思います。

ただし演奏姿勢と表情と汚らしいひげ面は気になってしょうがないんですがね!!・・・好みの問題だけどツィメルマンのひげ面の方がもっと素敵だわ。ツィメルマンの演奏は嫌いだけど(そういう問題ではない)。