ラヴェルのピアノ協奏曲2曲の性格について(エマール談)

ラヴェルのピアノ協奏曲は2曲ありますがご存知ですか。もちろん知っているって?まあまあ。一つはト長調の協奏曲、そしてもう一つが左手と呼ばれる、左手だけで弾く協奏曲。

エマールが面白い事を書いていましたので面白かったのでご説明しますね。

Ravel Piano Concerto in G, by Pierre-Laurent Aimard
http://www.gramophone.co.uk/feature/ravel-piano-concerto-in-g-by-pierre-laurent-aimard

いわゆるピアノ協奏曲として皆さんがご存知の作品はト長調の協奏曲です。そうです。ムチの一撃で始まる曲です。ともかくミケランジェリ/グラチスの録音が突出して有名かもしれません。ピアニストみんなあこがれ、それがミケランジェリ。ピアニストから評判の高いピアニストというのがいますけれど、ミケランジェリは圧倒的にこのタイプ。

全てが完璧。

と全盛期の演奏は言われました。信じない方のためグラチス版、、、ではなくチェリビダッケ版の映像を貼っておきましょう。

うん、冒頭からなんて優雅なんでしょう。考えられないぐらいすごい。ちょっと音質がいまいちですが、凄さは判って頂けるのではないかと。後期チェリビダッケにしてはスピードもそこまで遅くないよ。ニコリともしないミケランジェリの厳しすぎる顔とは無関係に生まれる超絶な音楽。

いまいち凄みがわからない、と言う人は他の人の録音を35種類ぐらい聴いてから出直してきて下さい。

で、エマールのお話なのでした。上の記事でラヴェルの2曲の簡単な分析をしているのですが、面白かったのが、深淵で、欠かすことの出来ない、非常にドラマティックな傑作!と言っているのが左手の協奏曲の方な点です。いわゆる有名な両手=ト長調の方は「ボックスオフィス向けだ」と言っているんですね。つまり、売れるために書いた、というわけです。ただし、だからといってト長調の方が駄目な作品と言うわけではない。

当初ト長調はディヴェルティメントとして計画されたそうです。ディヴェルティメントというのは「気晴らし」とかいう意味のイタリア語を語源にもつ音楽形式で、古典の時代によく作られました。ラヴェルは古典趣味の人だったのでそう思いついたのでしょう。実際この協奏曲は軽めの内容の音楽だし。ところどころジャズっぽくもあります。

そして、ここも重要ですが、演奏もト長調の方が簡単だという点。

はい。そうなんですよ。実はこのト長調の協奏曲はそんなに難しい曲じゃ無いんです。ラヴェルのピアノ作品は猛烈に難しいのがデフォルトですがこの曲の難易度はそこまで高くないんですよ。それに対して左手の協奏曲はもっとずっと内容もシリアスで重い。ゴジラのテーマが一瞬きこえるとかそういう空耳アワーもありますが、遙かにドスッと来る内容。

といった感じのエマールのお言葉がなんとなくがってんしたので思わず共感の合点ボタンをおしてしまいました。

いや、オーケストラパートはかなり大変そうですがね。

そう、最後にまた脱線しますが、筆者は一度オーケストラがほぼほぼ崩壊した演奏を生で聴いたことがあります。ピアノは・・・・アルゲリッチ!!指揮は・・・ラヴィノヴィチ!!アルゲリッチが三楽章の出だしでのろのろ弾きはじめたオーケストラ(オケが鈍かったのか指揮者なのか)に耐えかねたか、爆走を始めたんですよ。オケのテンポを無視した高速大激走!!手に汗握る!!大バトル!!!・・・なお崩壊したのは日本のオーケストラではありませんのでご安心を(そういう問題か)。