オルガ・ケルン国際コンクールから学ぶ、コンクールの「その後に」

先日このサイトでもお知らせした、今年11月開催のオルガ・ケルン(カーン)国際ピアノコンクールの詳細が発表されていますね。

オルガ・ケルン国際コンクール公式サイト
http://olgakerncompetition.org/

受けたいなと思う人はここから読んでいって下さい。応募のデッドラインは今年6月1日ですよ。

コンクールの形式としては彼女自身が優勝したヴァン・クライバーン国際と同じような感じになっている。優勝者は賞金だけでなく、2018年までコンサートがオファーされるということです。ヴァン・クライバーンと大きく違うのは室内楽の審査がないこと。ゆくゆくは室内楽をやりたいのかもしれませんが、室内楽を入れると予算も膨らみますしね。

ところでコンクールで優勝しても、世界最大クラスのものでなければ、賞金をいくばくかもらっておわり、というケースがまだ多い。これではキャリアを作っていくことができません。コンクール優勝っていう肩書を持ったピアニストは冗談じゃないほどたくさんいます。本当に掃いて捨てるほどいます。

なので現実問題としてコンクールで優勝したのに仕事がない。これはあまりにも可哀想。何のためにコンクールを受けたのか、なんのためにコンクールをやっているのか。

コンクールを受けるとなると練習する=うまくなれるからいいんじゃん、という情けない屁理屈を聞くこともありますが、それは本末転倒でナンセンス。

コンクール賞金はせいぜい数ヶ月の生活費にしかならない

このオルガ・ケルン国際、優勝賞金はたった11,000USドル。百万円ちょいです。多いなと思いますか?でもこれじゃあせいぜい数カ月程度の生活費ぐらいにしかなりませんよ。

かといってクラシック音楽のコンクールで1000万、2000万単位の超高額賞金を提供することも無理でしょう。ハノーファーのヨアヒム国際コンクールは確か50,000ユーロ今の日本円の価値で650万円ぐらいの賞金が出ますが、(今前回2015年の賞金を調べたら確かに1位50,000ユーロ、2位30,000ユーロでした)ヨアヒムぐらいメジャーなコンクールなら、優勝したら仕事は回ってきますよ。

というわけで、全国(多分アメリカの全国)のコンサートホール、コンサートオーガナイザーにはたらきかけて、彼らのところでコンサートを作ってもらう。

3者がハッピー、それがコンサート契約

コンサートホール側としても、「あのオルガ・ケルンがやっている」コンクール優勝者、というタイトルをつけて売ればチケットをわりと売りやすいはずです。そのへんの、というと言葉は悪いですが、腕は良くてもあまり知名度のないピアニストの公演をするよりもチケットの売上が見込めると判断するプロモーターもあるでしょう。あとはプロモーターの宣伝力次第。

ピアニストは演奏機会が与えられて経験が積めるし、コンクール側としても名前が売れるし、オーガナイザーもチケットが売れるし、と3者がハッピーなエンディングを約束されている(と想像する)いい関係が作れるわけです。

今後国際コンクールはこういう方向に行くのではないかと思いますが、あまりに似たようなのが増えすぎると、それはそれでわけがわからなくなるという問題もあります。