ピアニストの顔芸をどう考えるか。

顔芸、という言葉があるのかどうかはわかりませんけれども、クラシック音楽のピアニスト全般で「一番気になるところはどこ」と言われれば「演奏中の多彩な表情」なのではないでしょうか。

顔をしかめたり笑顔になったり、眉をひそめたり恍惚の表情を浮かべたり。みなさんは気にならないでしょうか。私は・・・やや気になってしまう方です。

なので、表情の多彩な方々、例えば大ピアニストですとA.ブレンデル、M.ウチダ、これらの方々の演奏を「見る」と、やや不謹慎ですが、うつむいて笑ってしまうことがあります。目を瞑れば大丈夫、、、でもなくて、あの顔の表情がありありと頭に浮かんで、やはり、笑ってしまう。不謹慎です。ごめんなさい。せめ控えめにニコ、と、アルカイックなスマイルをする程度ならいいのですが。

そう、それは例えばM.アルゲリッチ、Y.ワンといった人たちがそうでしょうか。この程度の顔芸ならOK!(何がOKなのやら)私も、何を隠そう何も隠さない、ピアノを習っていたことがあるのですが、よく言われました。「演奏中に自分が感動してはだめです。他人を感動させないといけません。演奏家が感動していると、お客さんは感動できません」

そうかもしれませんね。演奏家がボロボロと涙を流しながらピアノを弾いていると、まあ、一部のお客様は一緒になって泣いてくれるかもしれませんが、大多数の人はふふん、と、鼻で笑ったりしてしまうのではないでしょうか。

かの大天才ホロヴィッツは必要最小限の顔の表情でした。顔芸はしない、というようなことをインタビューで言っていたのを覚えています。

この点で、先日優勝してメジャー・ピアニストの仲間入りをしようとしているチョ・ソンジンが共感できることを言っていました。ネットで見つけたインタビューです。

何事にも「クール」なように見えるこの若者にも悩みがあるのだろうか。「些細なことかもしれませんが、演奏する時の僕の表情です。それが思い通りになりません。演奏に集中していると、自分でも気付かないうちにあんな表情になってしまいます」。

朝鮮日報より:
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/11/10/2015111001580_3.html

そう、顔芸をあまりよしとしていないようだ、というところ。好感が持てますね。控えめな顔芸、それが21世紀の巨匠ピアニストの条件である事に間違いはない・・・・・わけはないか。