ピアニスト自らがウェブサイトでプログラムについて語ること。アンスネスのケースから考える。

もはや当然過ぎてインターネットという言葉も聞かれなくなりつつあるネット時代です。べんりー、とぼやーっと思うのもいいんですけれども、べんりーだけではいかんわけです。

インターネットのおかげで、それまではある特定の人しか知らなかったようなことが知識として知られるようになり、全体として人生のレベルアップが可能になっていますね。・・・なんてちょっとおおげさでいまさらですけど、思うわけです。

何が言いたいのかというと、クラシック音楽の世界でも、世界中にあっという間に発信ができるわけです。さまざまな情報により、全体の底上げがされているのだと思います。

さらに何が言いたいのかというと、今世界でトップピアニストと言ってよいでしょう、レイフ・オヴェ・アンスネスという人が、今シーズン世界中で演奏するリサイタルプログラムと、なぜこの選曲なのかということを自身のウェブサイトで公開しています。

こういうことって、昔は会場に行ってプログラムを買って、そのプログラムを注意深く読んで初めて手に入るような情報でした。いや、プログラムを買っても、そもそもピアニストの意見なんて書かれていなかったことも多い。あるいは雑誌のインタビュー記事で手に入ったかもしれないですが、それだって雑誌にインタビューが載らないとそもそも読めない。なのでやっぱり、はー、べんりー、世の中変わったわー、とぼやっと思うわけです。

アンスネスのウェブサイトを読めば、へー、やっぱりアンスネスもシベリウスのピアノ曲は出来不出来の差が激しいと思っているんだねー、ショパンのバラード4番はやっぱり傑作っすよね!うんうん。などと思います。残念ながら東京にはこのプログラムで来ないのかな。演奏する都市名にTokyoの文字はない。

ピアニストとはつまり演奏家であって、音楽を客席に届ける人ですが、どういう曲がいい曲なのかをお客さんに提示する、一種キュレーターみたいな存在でもあるんですよね。

トップクラスのDJって、踊りやすかったりとか選曲がすごいとか聞きますけど、トップクラスのピアニストの選曲も興味深いですし、なんでこういう選曲なんだろうか?と、深読みしてみるのもまた面白いです。

ただし。深読みって、深読みしている本人は楽しかったりもするんですが、実は当事者はそこまで深く考えていなかったり、あるいは全然見当違いな結論を語っていることもあります。不肖私も、演奏家に、このプログラムがなんとかかんとか、と言って「はて?そうなの?」と返された事があります。深読みから断定、独善へ、というこわい結末だけは避けないといけませんね。と私なんかは思ったりもしたりしなかったりしています。

静かな朝です。

なお参考までに、アンスネスが今シーズン演奏しているリサイタルプログラムは以下のとおり。
http://www.andsnes.com/news/post/leif-ove-andsnes-explains-the-new-solo-recital-program

シベリウス:
キュリッキ Op.41
白樺 Op. 75, No. 4
樅の木 Op. 75, No. 5
森の湖 Op. 114, No. 3
森の歌 Op. 114, Op. 4
春の幻 Op. 114, No. 5

ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第18番「狩」

ドビュッシー:
グラナダの夕べ
練習曲第11番 組み合わされたアルペジオのための
練習曲第6番  8本の指のための
練習曲第5番 オクターヴのための

ショパン:
3つの新しい練習曲
即興曲第1番
夜想曲第4晩
バラード第4番