ブレグジットが音楽界に及ぼす影響

イギリスがEUから抜けることによる大きな影響が懸念されていますが、音楽業界のトップ事務所の一つである、ハリソン・パロットという会社が、このたびパリにも事務所を開設するというニュースがありました(既に2005年からミュンヘンにも事務所があるけれど)。

http://www.harrisonparrott.com/news/harrisonparrott-opens-paris-office

Commenting on the new office, Jasper Parrott, co-founder and Executive Chairman, said:

“HarrisonParrott, although initially British based has developed over the years into the most international and diverse music and arts management company in the business and is active in all major cultural centres in the world. Our talented multinational and polylingual staff sees our work with artists as being borderless in range and ambitions and the opening of the French office is a further step to strengthen this and to consolidate our cooperation with our many trusted local partners.”

新しい事務所について、創立者の一人でエグゼクティブ・チェアマンのジャスパー・パロットは以下のようにコメントした。

「ハリソン・パロットは、イギリスをベースにしつつ国際的に幅広く音楽と芸術分野でのマネージメントのビジネスを長年発展させてきており、世界の「文化の中心地」と言われるあらゆる場所で活発に活動してきた。我々のスタッフ達は様々な国籍、多言語を話し、アーティストたちとともに、まさにボーダーレスで野心的に活動してきたが、フランスの事務所を開設することは、フランスの信頼置けるパートナーたちとの提携をさらに強化し、確たるものとするさらなるステップとなる。」

まあこのように語っておられるわけですが、フランスでの活動を活発化させるということの意味の裏に、ブレグジットの事も隠れているのはまちがいないです。

イギリスはどうなるかわからない。という危機感。早めに手をうっておくに越したことはない、という事でしょう。日本に住んでいる我々にはその感覚が肌でわからないので、漠然と想像するしかできませんが、その危機感はかなりのものだと漏れ聞いております。

そもそもこういう大手の音楽事務所には、多言語を話す職員が何人もいるので、どんな言語が来たってへっちゃらなんですが(クラシック音楽に関係する言語と言えばまず英語、それからフランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、イタリア語ぐらい。これだけ話せればほぼ世界中の全てとつながれるはず)、事務的なことでイギリスにいるとブレグジット後はやりづらいこともたくさんあるでしょう。

あと、地元にという言い方は変ですが、その国に事務所があることで、小回りが利くようになるという利点もあるかなと思います。今後はこういう大きな事務所が、大きなコンサート、でかい音楽祭とかだけではなく、小さなコンサートを扱うことも増えていくでしょう。小さな所でのチャンスを細かく拾っていく、そういう姿勢も重要になっていくと思います。

大きなホールやオーケストラへの助成金や支援金は、世界的に急速に減る傾向にある。オーケストラの合併とか解散とかいうような話も現実になっているこのご時世なのです。

ちなみにハリソン・パロットという会社にどんなピアニストが所属しているか知らないという方は以下URLを見てね。ツィメルマンやらアシュケナージやらポリーニやらエマールやらがいるから。
http://www.harrisonparrott.com/artist#piano